適応障害

適応障害とは、ある特定の状況や出来事がその人にとってとてもつらく耐えがたく感じられ、そのために心身のさまざまな症状が現れるものです。
たとえば憂うつな気分や不安感が強くなるため、涙もろくなったり、過剰に心配したり、神経が過敏になったりします。
また、遅刻、早退、不登校、無謀な運転、粗暴行為などの行動面の症状がみられることもあります。
ストレスとなる原因ははっきりしている事が多く、原因の状況や出来事から離れると症状は次第に改善します。
しかしストレスの原因からすぐには離れられない、変えることが難しい場合、そのままにしておくと症状が慢性化してしまうこともあります。
当てはまるかな、と感じたときはお早めにご相談ください。

主な症状

適応障害はストレス因から離れることで症状が改善することが多くみられます。
たとえば職場の人間関係がストレス因となっている場合は出勤日には憂うつで強い不安を覚えるなどの精神症状や、緊張して手が震えたり、頭痛や吐き気がしたりする身体症状が認められることもありますが、休日には憂うつな気分や不安が軽減して趣味を楽しむことができる場合もあります。

症状としては下記のようなものがあります。


精神面の症状
不安、抑うつ気分、怒り、焦燥、緊張など

身体症状
動悸、めまい、不眠、倦怠感、手の震え、頭痛、腹痛など

行動面の症状
行きすぎた飲酒や暴食、無断欠席、無謀な運転やけんかなどの攻撃的な行動など

治療について


ストレス因の除去
ストレス因の除去とは、環境調整することです。
適応障害の治療には、ストレス因を取り除くなどの環境調整をして、適応しやすい状況をつくり、ストレスを軽減することが先決です。
しかし実際にはすぐには環境調整ができないケースもあります。
その場合はストレス因の除去だけではうまくいきませんので、次のステップも必要となります。


適応力を高める
環境調整が難しい場合には、並行して、ストレス因に対しての本人の適応力を高めるための治療をします。
ストレス因を本人はどのように受け止めているかを考えていくと、その人の受け止め方にパターンがあることが多くみられます。このパターンに働きかけていま現在の問題に対処していけるよう手助けするのが「認知行動療法」と呼ばれるカウンセリング方法です。
また、現在抱えている問題と症状自体に焦点を当てて医師と共に解決方法を見出していく「問題解決療法」もあります。
認知行動療法も問題解決療法も、医師と協同して行っていくものですが基本的には治療を受けるご本人が主体的に取り組むことが大切です。


おくすりによる症状の緩和
症状に応じて、薬物療法という方法もあります。 不安や不眠などに対してはベンゾジアゼピン系の薬、うつ状態に対して抗うつ薬を使うこともあります。
ただし適応障害の薬物療法は「症状に対して薬を使う」という対症療法になります。根本的な治療ではありません。
つまり適応障害の治療は薬物療法だけではうまくいかないことが多いため、環境調整やカウンセリングが重要になっています。

うつ病

眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといったことが続いている場合、うつ病の可能性があります。
うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。
脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じてしまいます。そのため普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられるという、悪循環が起きてきます。

薬による治療とあわせて、認知行動療法も、うつ病に効果が高いことがわかってきています。
早めに治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、無理せず早めに専門機関に相談すること、そしてゆっくり休養をとることが大切です。

主な症状

下記はあくまで目安です。
あてはまるかな?と思ったらまずはご相談ください。


周りからみてわかるサイン
表情が暗い、涙もろくなった、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増える など

体に出るサイン
食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛や肩こり、動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい など

長い期間続く場合はうつ病のサインかもしれません
・抑うつ気分(憂うつ、気分が重い)
・何をしても楽しくない、何にも興味がわかない
・疲れているのに眠れない、一日中ねむい、いつもよりかなり早く目覚める
・イライラして、何かにせき立てられているようで落ち着かない
・悪いことをしたように感じて自分を責める、自分には価値がないと感じる
・思考力が落ちる
・死にたくなる

治療について

うつ病と判断された場合には一般に抗うつ薬による治療が行なわれます。
ただし、典型的なうつ病でも軽症の場合は薬の効果がそれほど期待できないこともあるので、薬物療法が絶対であるというわけではありません。
症状や原因に応じた治療が必要になります。


おくすりによる治療
うつ病もほかの病気と同じように、くすりによる治療で身体の異常を改善していくことが必要です。
「抗うつ薬」といわれるものだけでもSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)といったものから三環系抗うつ薬などいくつかのグループがあります。
また、抗うつ薬の他にも、症状に合わせて抗不安薬や睡眠導入剤なども使われます。
どの薬が効くかは治療を受ける人一人ひとりで異なり、また同じ人でも病気がどの段階かによって違ってきます。

薬物治療では、薬の効果と副作用についてきちんと説明を受け、処方された量と回数をきちんと守ることが大切です。 効果が出ない、副作用が心配、など不安な点がありましたらご相談ください。


精神面へのアプローチ
休養や環境調整、おくすりによる治療でうつ病はかなり回復するといわれていますが、同じような状況の中でうつ病の再発を防ぐ目的で行われるのが精神療法です。
なにか困った事にぶつかった時に悲観的な物事の捉え方をするなど、うつ状態を悪化させてしまう思考のパターンに働きかけて対処していけるよう手助けする「認知行動療法」と、うつ病の要因となった対人関係の問題を解消することで、ストレスを軽減させる「対人関係療法」などがあります。

双極性障害(躁うつ病)

双極性障害は、ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態の両極端な状態のいったりきたりを繰り返す脳の病気です。
「双極性障害」はかつて「躁うつ病」と言われていましたが、「うつ病」とは異なる病気で、治療も異なります。

躁状態の時は気分が高ぶって、眠らなくても元気で活動し続けたり、現実離れした行動をとりがちになり、無謀な計画などを実行して社会的信用や財産を失ってしまうなど激しい行動をとったりしてしまいます。
うつ状態の時はうつ病と同じように憂うつになったり、気分が重くなったりしますが、躁状態の時の自分に対する自己嫌悪も加わり、ますますつらい気持ちになってしまいます。
また、躁のときには本人は気分がよいので治療を受けなくなってしまうことがよくあります。本人だけでなく、周囲の人も日頃の様子や気分の波を見守り、躁状態に気づくことが大切です。

主な症状

こんなことがありませんか?

躁状態のサイン
・睡眠時間が2時間以上少なくても平気になる
・寝なくても元気で活動を続けられる
・人の意見に耳を貸さない
・話し続ける
・次々にアイデアが出てくるがそれらを組み立てて最後までやり遂げることができない
・根拠のない自信に満ちあふれる
・買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込む
・初対面の人にやたらと声をかける
・性的に奔放になる


うつ状態のサイン

治療について

双極性障害の治療には薬による治療と精神療法的アプローチがあります。
「こころの悩み」とは異なり、カウンセリングだけで回復が期待できるものではありません。 薬物療法を基本に治療法を組み立てていきます。


おくすりによる治療
躁状態やうつ状態を改善するだけでなく、再発予防や症状を安定させるためにも薬物治療は欠かせません。
また、症状が多様な双極性障害は、とくに薬の使い分けが難しい疾患です。
双極性障害のうつ状態に対して使う薬は、うつ病の時に使う薬とは異なります。うつ病に効く薬は、双極性障害のうつ状態には効かないのです。治療してもなかなか治らないうつ病が実は双極性障害だった、ということもしばしばあります。


理解を深める
双極性障害の治療では、薬物療法と併用して精神療法を行うことが治療を順調に進めるために重要になってきます。

双極性障害に必要な精神療法は、いわゆるカウンセリングではなく、本人が自分の病気を知り、それを受け入れ、自ら病気をコントロールすることをサポートするものです。
精神療法によって自分の病気を知っておくことで、再発の兆しにすぐに気づいて対応することができるようになり、再発時に早期に治療を始めることができ、悪化を防ぐことができます。

パニック障害

パニック障害は、突然理由もなく動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、そのために生活に支障が出ている状態をいいます。
このパニック発作は、死にそうほどの苦痛を感じ、自分ではコントロールできないと感じます。
そのため、また発作が起きるのではないかと不安になり、発作が起きやすそうな場所や状況を避けるようになります。とくに、電車やエレベーターの中など閉じられた空間では「逃げられない」と感じて、外出ができなくなってしまうこともあります。
パニック障害では薬による治療とあわせて、少しずつ苦手なことに慣れていく心理療法が行われます。無理をせず、自分のペースで取り組むことが大切です。周囲もゆっくりと見守りましょう。

主な症状

パニック障害は、「パニック発作」から始まります。発作をくりかえすうちに、発作のない時に「予期不安」や「広場恐怖」といった症状が現れるようになります。
また、うつ症状をともなうこともあり、逆にうつ病がきっかけとなりパニック発作が起きる場合もあります。


パニック発作
突然なんの前触れもなく下記のような症状があらわれる。
・恐怖感や不安感に襲われる
・動悸、めまい
・発汗
・窒息感、呼吸困難感
・吐き気
・手足の震え、身震い
・胸痛
パニック発作はパニック障害でなくてもみられますが、「予期しないパニック発作」が、パニック障害の特徴的な症状です。


予期不安
パニック発作をくりかえすうちに、発作のない時も「また発作が起きるのではないか」といった不安に苛まれるようになります。
これが「予期不安」で、パニック障害に多くみられる症状です。
このほかにも、いつ発作が起こるかという不安のあまり、仕事を辞めるなどの行動の変化が起きるようになるのもパニック障害の症状のひとつです。


広場恐怖
発作が起きた時、逃れられない場所や助けが得られない場所を限り避けるようになります。
これを「広場恐怖」といいます。
広場恐怖が強くなると、外出を避るようになり、仕事や日常生活、人間関係にも影響が出てきます。

治療について


おくすりによる治療
薬物治療では、まずは「パニック発作」を抑制、次いで「予期不安」・「広場恐怖」の軽減を目標に、SSRIをはじめとする抗うつ薬と抗不安薬の一種であるベンゾジアゼピン系薬剤を使用します。
これらの薬の効果は人によって違うため、効果を確認しながら増減したり薬を変更したりする必要があります。
正しく効果を確認するためには、医師が定めたとおりの量と回数を守って服用してください。
パニック障害は薬物療法が効果を発揮しやすい障害です。「薬に頼らず気持ちだけで治す」というのは得策ではありません。
効果が出ない、薬の服用に不安な点などがありましたらご相談ください。


精神面へのアプローチ
パニック障害では、薬物治療に加えて精神療法の併用が重要です。
物事の捉え方や思考のパターンに働きかけて対処していけるよう手助けする「認知行動療法」は、薬による治療と同じくらいパニック障害に治療効果があることが認められています。
薬が効き始めて発作が起こらなくなってきたら、苦手だった外出などに少しずつ挑戦することも治療の一環になります。

不眠症

不眠症は、睡眠障害の一つで、寝付けなかったり、眠りを維持できない、朝早く目が覚める、眠りが浅く十分眠った感じがしないなどの症状が続き、よく眠れないため日中の眠気、注意力の散漫、倦怠感など様々な体調不良が起こる状態をいいます。
日本においては約5人に1人が、このような不眠の症状で悩んでいるといわれる国民病の一つです。
不眠症は、加齢とともに増加し、中年、老年と急激に増加し、男性よりも女性に多いといわれています。

主な症状

不眠
・寝つきがわるい
・いったん眠りについても夜中に何度も目が覚める
・朝早く目が覚めてしまう
・熟睡できない
→精神疾患や身体疾患、服用薬、下記の睡眠障害をチェックし、そのうえで「不眠症」かどうか判断

治療について

おくすりによる治療
生活習慣や環境の改善を行っても効果が出ない場合は、睡眠薬による薬物療法を行います。
寝つきが悪い、途中で起きてしまう、早くに目が覚めてしまう、などの不眠症状に応じて、睡眠薬が使用されます。
また、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬なども使用されることがあります。
医師に指示された用法や用量を守って、正しく使用しましょう。睡眠薬は絶対にお酒と一緒に飲んではいけません。睡眠薬を服用したら30分以内には寝床につきましょう。
服用していた睡眠薬をいっぺんに中止すると、リバウンドで不眠が悪化することがあります。医師の指示のもと、ゆっくりとやめるようにしましょう。

更年期障害

更年期とは、人により個人差がありますが、閉経前後の45歳から55歳くらいの期間をいいます。
更年期障害は、ホルモンのバランスの乱れにより、体と心に訪れるさまざまな不調の総称です。
疲れやすい、汗を多くかく、冷え性といった、自律神経失調症と似た身体症状を引き起こすほか、精神症状として、イライラ感、不安感、気分の落ち込み、うつ、無気力感などが現れます。

主な症状

人によって症状はさまざまな症状が出ます。
更年期の症状はエストロゲンの減少だけではなく、心理的な要因や社会的・環境的な要因なども複雑に関与するため、全身にさまざまな症状が出る。


精神面の症状
イライラ感、不安感、気分の落ち込み、うつ、無気力感 など
身体症状
動悸や息切れ、のぼせ、ほてり、発汗異常、頭痛や腰痛、手足のしびれ、不眠、食欲不振 など

治療について

心と体のバランスを整える
更年期障害による精神症状はホルモン補充療法を受けて軽減することもありますが、長引く場合はや不安やイライラが強い場合は心療内科による治療(薬物療法、カウンセリングなど)が必要な場合があります。
薬による治療と並行して、生活習慣改善、カウンセリングなども行い、体と心のバランスを整えていくことが大切です。

社会不安障害

社会不安障害は、初対面の人と会ったり、人前で注目が集まるような状況で強い不安や恐怖、緊張を感じ、何か失敗して自分が恥をかくのではないかという心配や強い不安を感じる病気をいいます。
性格の問題と混同される場合もありますが、不安や緊張とそれにともなって現れる身体の症状が、発言や行動に支障をきたすほど著しく、その結果、社会生活に障害がでてしまう状態が社会不安障害です。

主な症状

主な症状
・人前で激しく緊張する
・手足の震え、声が震える
・動悸・息苦しさ
・めまいや吐き気
・腹痛、下痢
・口が異常に乾く
・発汗
・赤面・ほてりやのぼせ

また、社交不安障害の特徴は、社会状況に対する「予期不安」と、その状況から避ける「回避行動」という症状があります。

治療について

おくすりによる治療
薬物療法では、主に抗不安薬を用います。
お薬を飲み始めてから、比較的早く効果が出てきますが、自己判断で服用を止めたり、減らしてしまうと再発の可能性が高まります。
症状が出なくなっても自己判断をせず、医師の指示に従ってお薬の服用を継続することも大事です。


精神面へのアプローチ
「認知行動療法」により、不安や恐怖を感じる状況に対する受け止め方にアプローチしていきます。
不安を抱きやすい考え方のパターンを変えたり、不安の対処法を工夫したり、不安に慣れる訓練を行います。

統合失調症

統合失調症は、脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。
そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。
統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。

主な症状

幻覚や妄想
統合失調症で多く現れる症状は幻覚や妄想です。
・いつも不安そうで、緊張している
・悪口をいわれた、いじめを受けたと訴えるが、現実には何も起きていない
・監視や盗聴を受けていると言うので調べたが、何も見つけられない
・ぶつぶつと独り言を言っている
・にやにや笑うことが多い
・命令する声が聞こえると言う


感情や行動面
・話にまとまりがなく、何が言いたいのかわからない
・相手の話の内容がつかめない
・作業のミスが多い
・打ち込んできた趣味、楽しみにしていたことに興味を示さなくなった
・人づきあいを避けて、引きこもるようになった
・何もせずにゴロゴロしている
・身なりにまったくかまわなくなり、入浴もしない
・感情の動きが少なくなる
・他人の感情や表情についての理解が苦手になる

治療について

薬物療法と心理社会的な治療は車の両輪のようにどちらも重要で、組み合わせて行なわれます。

おくすりによる治療
薬物療法では、症状を抑える抗精神病薬を中心に、補助的に抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、気分安定薬を用います。
薬をいつまで続けるのかは、個人差があり一口にはいえません。
再発をくりかえすことが多い疾患なので、しばらく症状が安定しているからといって自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは、再発を誘発して重症化の危険を高めます。
「副作用がつらい」「薬をやめたい、減らしたい」などの悩みがあれば、医師にご相談ください。


心理社会的な治療
病気の自己管理の方法を身につけたり、社会生活機能のレベル低下を防ぐ訓練などを行うもので、精神療法やリハビリテーションが含まれます。病状や生活の状態に合わせて、様々な方法が用いられます。
例としては下記のようなものがあります。
・心理教育:病気や治療に関する知識を身につけて、対処法を学ぶ
・生活技能訓練(SST):ロールプレイ等を通じて、社会生活や対人関係のスキルを回復する訓練を行う
・作業療法:園芸、料理、木工などの軽作業を通じて、生活機能の回復を目指す

強迫性障害

強迫性障害では、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ確認をくりかえしてしまうことで、日常生活にも影響が出てきます。
意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念、ある行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。
たとえば、戸締まりや火の元を何度も何度もしつこく確認しても安心できなかったり、特定の数字にこだわるあまり生活が不便になったりすることがあります。
こころの病気であることに気づかない人も多いのですが、治療によって改善する病気です。
「しないではいられない」「考えずにいらない」ことで、つらくなっていたり不便を感じるときには、専門機関に相談してみましょう。

主な症状

「強迫観念」と「強迫行為」
強迫性障害は、誰もが生活のなかで普通にすること(戸締まりの確認や手洗いなど)の延長線上にあります。
しかしながら、下記のようなことが行き過ぎて日常生活に異常をきたしていたり、周囲の人が困っている場合などは念のため受診を考えるのもいいかもしれません。

不潔恐怖と洗浄
汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い、入浴、洗濯をくりかえすドアノブや手すりなど不潔だと感じるものを恐れて、さわれない。
加害恐怖
誰かに危害を加えたかもしれないという不安がこころを離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認する。
確認行為
戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを過剰に確認する(何度も確認する、じっと見張る、指差し確認する、手でさわって確認するなど)。
儀式行為
自分の決めた手順でものごとを行なわないと、恐ろしいことが起きるという不安から、どんなときも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない。
数字へのこだわり
不吉な数字・幸運な数字に、縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる。
物の配置、対称性などへのこだわり
物の配置に一定のこだわりがあり、必ずそうなっていないと不安になる。

治療について

強迫性障害の治療には、次の2つの療法を組み合わせるのが効果的だとされています。

認知行動療法
再発予防効果が高い「曝露反応妨害法」が代表的な治療法です。
「曝露反応妨害法」とは、患者さんに不安を感じる状況に直面してもらい、強迫行為をしないよう我慢してもらう、という行動療法です。
たとえば、ドアノブなど、汚いと感じるものを触って手を洗わないで我慢する、などです。
こうした課題を続けていくと、強い不安が弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくても大丈夫になっていきます。


おくすりによる治療
患者さんの多くは、強迫症状や抑うつ、強い不安感があるので、まず抗うつ薬のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)で状態を安定させてから、精神療法に入るのが一般的です。
うつ病よりも高用量で、長期間の服薬が必要になります。最初は少量から始め、薬との相性を見ながら服薬量を増やしていきます。
SSRIはほかの抗うつ薬に比べると、副作用は軽いものですが、服用を始めてから体調がよくない気がするなどの不安があれば、すぐに医師にご相談ください。

自律神経失調症

自律神経失調症は、ストレスなどが原因で、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れて出る様々な症状の総称です。

自律神経は、交感神経という身体を活発に動かすときに働くものと、副交感神経という身体を休めるときに働く二つがあります。これらが互いにバランスを取りながら身体の状態を調節していますが、このバランスが崩れることがあり、その原因として、不規則な生活によって自律神経が興奮し続けたり、ストレスによる刺激、更年期におけるホルモンの乱れ(更年期障害)、先天的要因などが挙げられます。

主な症状

精神面の症状
気分の落ち込み、無気力感、憂うつ感、不安感、焦燥感、イライラ など

身体症状
だるい、眠れない、疲れがとれない、頭痛、動機や息切れ、めまい、のぼせ、立ちくらみ、下痢や便秘、冷え など

治療について

強迫性障害の治療には、次の2つの療法を組み合わせるのが効果的だとされています。

環境の調整
ストレス因が分かっている場合は可能な限り環境の調整を行います。
また十分な睡眠を取って休息を図ること、規則正しい生活リズムの回復を目指すことも大切になります。


おくすりによる治療
症状に対して、必要と判断される場合にのみ、自律神経調整薬や抗不安薬、睡眠薬などが用いることがあります。

精神面へのアプローチ
もし症状の原因にストレスや思考のくせが関わっている場合には、認知行動療法などの精神療法による治療が改善につながる場合があります。

身体表現性障害

身体表現性障害は、頭痛や吐き気・めまいなど自覚症状が長期的にあるのにも関わらず、検査結果では何の異常もでない状態のことです。
症状は実際に存在しているため、人によっては身体的な病気ではないという説明を受け入れなかったり、重大な病気ではないかと考え、精神科や心療内科の受診に行きつくまで時間を要することがあります。

主な症状

身体症状
動悸、痛み、手足のしびれ、吐き気、めまい、喉のつまり、胃腸の調子が悪い、特定の部位に不快な疼痛がある など

精神面の症状
「自分は深刻な病気にかかってしまっている」というような恐怖が頭から離れない

治療について

身体表現性障害の治療は、身体的な問題はないということをきちんと理解し、納得することが大切です。

おくすりによる治療
症状に対して、必要と判断される場合には抗うつ薬、抗不安薬、睡眠挿入薬などを用いることがあります。

精神面へのアプローチ
症状をコントロールできるようになることを目標に、精神療法で症状の原因となりうるストレスへの対処法や、症状そのものへの対処法を考えていくことも大切です。
有楽町・日比谷の
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